「故郷を歩けば」
久しぶりに降りる駅は随分モダンになっていて、いきなりため息が出た。
アメリカでビッグになると故郷を飛び出し、失意の実家帰り。情けないったらありゃしない。知り合いには絶対会いたくない。
「ケンタ?」
振り向くと、サトシ。いきなりか...。
懐かしいなー、なんて適当に盛り上げ、忙しいと早々に切り上げて逃げる。
だが悲劇は続いた。
駅を出てすぐ、片思いだったマネージャーのミサキに。通りに出れば、酒屋を継いで配達中のヨウジに。ひっそり引きこもり、ひっそり再起して出て行こうと思っていたのに...。
裏道から行った方が良いと、えらく回り道をして実家に着くと、目が点になった。
「どこ行ってたんだよ。宴会やるぞ!」
缶ビールを掲げるヨウジの周りに、かつての部活仲間達が笑っていた。
「おばさーん、ケンタ帰ってきたよ」
ヨウジ達が勝手に実家に雪崩れ込んだ。昔みたいにーー。
ああっ、と天を仰ぎながら、俺は笑った。
スタート地点に戻っただけだった。