グッド・バイ2025 (缶)

グッド・バイ2025 (缶)

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太宰治が家族と暮らし、数多くの作品を執筆した三鷹。命日の「桜桃忌」に合わせて醸造する『グッド・バイ』、今年で第3弾。2025年版も故郷・青森県五所川原産のリンゴを使ったフルーツエールだ。さわやかな余韻のなか、未完の絶筆作品の続きを想像したい。OGABREWING周辺は太宰治のゆかり深い場所が点在、太宰治旧宅跡も徒歩5分。ビール片手に文学・歴史散歩を。

  • スタイル : フルーツエール
  • モルト : ハイデルベルク、ウィート
  • ホップ : ザーツ
  • ABV : 4.0%
  • IBU : 20
  • SRM: 3
  • 副原料 : りんご果汁(品種:五所川原産トキ)
  • 容量: 350ml

 

グッドバイ2025 ショートショート
「再見」


「わー、かわいい!」
子供達がパンダを見て、大きな嬌声を口々にあげる。遠目に見つめる私の体に、喜びの泉でもあるかのように熱いものがフツフツと湧いてくる。
視線を移すと、パンダの被り物を被った中年女性が涙を流していた。きっと私の歳よりも長くパンダのファンでいてくれたのだろう。今度は目頭が熱くなった。
「笑ったり、泣いたり、忙しいな」
リュウ先輩だ。なんとなく悔しくて、「泣いてませんよ」と前を見たまま口を尖らせた。
「寂しくなるな」
「はい」
今度は素直に応える。
小さい頃、パンダを見て、あまりの可愛さに驚いて、私の夢はパンダの飼育員になることになった。そして、その夢は叶った。だけど、パンダは帰国してしまう...。
リュウ先輩はパンダ飼育員の先輩で、歳は四つぐらい上だったと思う。
「でも、なんか嬉しいなー」
リュウ先輩が訳のわからないことを言うので、「えっ、なんでですか」とリュウ先輩の顔を眉根を寄せて見た。
「だって、中国の動物をこんなにも愛してくれてるんだぜ。リエさんだって、例えば和食のこと褒められたら嬉しいでしょ」
リュウ先輩はお父さんが中国の人で、お母さんが日本の人だ。そんなリュウ先輩にとって、パンダは自分のような架け橋のような存在で、それが飼育員になった動機と聞いていた。
「かわいいものを誰もがかわいいと言えて、美味しいものを誰もが美味しいた言える。そして、寂しいってことも素直に。それって嬉しいことだよね」
なんかグッと来た。
「パンダ、帰ってきますかね」
「ああっ、帰ってくるさ。パンダは平和の使者だからな」
フフフッと私はもう一度前を見た。リュウ先輩の前向きなところが好きだ。
「じゃあ、さよならとは言わないでいいですね」
「再見(ザイツェン)が良いと思うよ」
そうですね、と二人で笑った。
でもまだ言わない。もう少しみんなといられるのだから。