さわやかに広がる梅の香りと、ほのかに感じる酸味。OGA BREWINGでは大切なスタッフの門出に向けて「卒業ビール」を醸造しています。2025年の卒業生は、まな。希望あふれる新しい道に幸あれ! チャーミングなまなに寄り添うビールです。春の風を感じながらアウトドアでもすっきりと楽しめるスタイルです。出会いと別れが交差する、涙うるうる必須の春の乾杯に。
- スタイル : フルーツエール
- モルト : ハイデルベルク
- ホップ : ザーツ、アマリロ
- 副原料:梅、杏ピューレ
- ABV :4.0%
- IBU :23
-
容量: 350ml
「梅清香」ショートショート
涙の代わりに
1月の下旬、親友のレギナが梅の花を見に行きたいと誘ってきた。
エストニア留学生のレギナは、この春、卒業とともに母国に帰国することになっていた。
ピンクに染まる公園を二人で歩きながら、「梅も綺麗だよね」と言うと、「でも、サクラは桜の方が好きでしょ?」と、レギナがウインクした。
「好きと言うか……、名前が同じだから他人に思えない」
「他人? 他木でしょ?」
ハハっと笑った。同時に、ほんと日本語上手になったなと感心する。
「でも、梅も綺麗で大好きだよ」
「良かった。じゃあ、梅の前で卒業写真撮ろう」
卒業写真?
卒業時に袴を着て満開の桜の前で卒業写真を撮ろうと、かねてから約束していたので不思議に思った。
「……実は、もうすぐ帰国するの」とレギナが目を伏せた。
おばあちゃんの調子が悪いので早く帰りたいのだそうだ。
「だから、梅の花の前で、サクラと卒業写真を撮っておきたいの」
レギナと桜の下で卒業を迎えるつもりだった気持ちが私を混乱させた。
「ごめんね、サクラ」
「ううん、レギナは悪くない。おばあちゃんのところに早く行ってあげて」
そう言いながら、私は泣きそうだった。
「サクラ、泣かないで。だって、永遠の別れじゃないでしょ」
「うん、わかってる……、ごめん」
レギナは優しく私の両肩に手を置いて、「梅の花って散らないんだよ」と妙なことを言った。
首を傾げる私に、「梅は涙がこぼれるように花びらを落とすから、散るじゃなくこぼれるって言うの」と続けた。日本語の多様な表現を卒論にしていたレギナ。さすがと感心してしまう。
「だから、涙は梅の花に任せて、私たちは笑おうよ」
レギナの話に私はいつしか落ち着いて、笑顔で頷いた。
綺麗な梅を選び、道行く人に頼んで、二人並んだ卒業写真を撮る。
写真には満開の笑顔の二人。
その横に幾つか梅がこぼれていた。二人の涙の代わりに。