収穫後すぐにピューレ保存した杏(あんず=アプリコット)を、ふんだんに使ったフルーツエール。杏本来のやさしい甘さと酸っぱさをバランスよく活かして、スッキリと仕上げました。苦いビールが苦手な方や、ファーストドリンクにもおすすめ。あたたかな部屋でゆっくりと味わいたい、ややヘイジーなスイート&サワー。杏をしっかり感じます。
- スタイル : フルーツエール
- モルト : ピルスナー
- ホップ : カスケード
- 副原料:あんずピューレ
- ABV : 4.0%
- IBU : 23
- 容量: 350ml
あんずエールショートショート
「レクイエム」
大好きなおとうちゃん。でも、ひとつだけわからないことがあった。だから、あたしはずっとそのことが気になっているのだ。
そんなおとうちゃんが、あたしの名前のついたビールを作った。
おとうちゃんは、あんずエールって書かれた缶ビールをお墓に供えた。
お墓に手を合わせて目をつむるおとうちゃん。少しして、おとうちゃんの肩が小刻みに震えた。そして、おとうちゃんはオイオイと泣き出した。
あたしは目を丸くした。だって、私の気になっていたことって、あたしが死んだのにおとうちゃんが泣かなかったことだから。あたしのことが好きじゃないの?そのことだけを知りたくて、神様に頼んで、ずっとおとうちゃんのそばにいたんだよ。
「あんず、ごめんな。やっと泣けたよ」
おとうちゃんがお墓と話し始めた。
「泣いたら、あんずが死んだことを認めるみたいで泣けなかった」
バカだな、おとうちゃんは。だって、あんずは死んだんだから、認めるとか認めないの問題じゃない。でも嬉しかった。やっぱりおとうちゃんはあたしのことが大好きだとわかったから。
「ちょうど、二十歳だろ。だから、あんずのビール、飲んでくれ」
おとうちゃんはほんとバカだな。あたしは十二歳のままだよ。
あっ、神様がわたしを呼ぶ声。
わかってます。もう思い残すことはないから、すぐに神様のところに行きますよ。
(おとうちゃん、あたしのビール、ありがとう。きっと一番人気になるよ。それと寂しいからって、すぐにこっちに来なくて良いよ。じゃあ、またね)